世界が広がる出会い
あれから十数年。ともみは中学生になりました。
毎日ケーキやお菓子を手作りすることが大好きで、
学校に持って行くと友だちが喜んで食べてくれます。
その笑顔を見るのが楽しくて、自然と
将来はお菓子の専門学校に行きたい!と思うようになります。
ところが・・・
「それはダメだ!好きなことは趣味かアルバイト程度にしておきなさい」
父親から強い反対を受けました。
(どうしても製菓の専門学校に行きたい!)
親を説得する選択肢もあったけれど、
父親の「アルバイト」という言葉にピンとひらめいたともみ。
(なるほど・・・。高校生になったら
お菓子屋さんでアルバイトすれば腕を磨ける!
それに、専門学校に行くためにはお金も貯めなくちゃ。
よし、まずはアルバイトしよう!)
こうして、こっそり専門学校への夢を秘めたまま、
親の薦める機械科の高校に進むことに。
「えぇっ!?パティシエになりたいのになぜ『機械科』へ!?」
「せめて、普通科にすればいいのでは?」
思わずツッコミを入れたくなったことと思います。
お菓子を作ることも好きでしたが、
銘菓「萩の月」も好きだったともみは
土産屋さんでベルトコンベアから
次々とあの黄色くてまん丸い萩の月が流れてくる様子に感動し、
こんなお菓子を生み出す夢のような機械を作りたい!と思ったのです。
しかしいざ高校生活で
溶接や旋盤、プログラミングといった授業で学んで分かったのは、
機械を作るには莫大な知識とお金と労力が必要だということ。
色々なお菓子を作りたかったともみにとっては
とてつもなく長い道のりに感じました。
しかも、生徒は男の子ばかり。
お菓子に興味がある友だちも見当たらず。
機械科に期待が膨らんでいたともみ。
この時は少しだけ落ち込みました。
けれどよく見てみると、
機械科の同級生は個性にあふれた魅力的な人材の宝庫。
話してみると自分とは違った感性だけど、
お菓子作りへの情熱に負けないくらい、
熱中する何かを持っていて、楽しそうな人達。
これまでとはまた違った意味で
恵まれた環境にいることに気付きます。
自分の個性を理解し受け入れている人たちは、
他者の個性にも寛容で、
機械に興味のないともみのことにも理解を示し、
仲間として打ち解けていくのでした。
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(サワサワ・・・ソヨソヨ・・・)
(・・・ヨカッタネ・・・)
(・・・タイセツナコトニキヅケテ・・・)
(・・・ツギハボクタチノコトニキヅイテクレル・・・カナ?・・・)
(つづく)
#とも’s STORY
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